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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)803号 判決 1954年7月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士菅野虎雄の上告理由は別紙添付理由書記載のとおりである。

同第一点について、

本件の訴訟物は建物の所有権であるから、被上告人がこれを取得するにいたつた事由は、請求の原因ではなく、請求を理由ずける攻撃方法としての必要な事実にすぎない。従つて被上告人が初め建物の所有権の承継取得を主張し、後にその原始取得を主張するにいたつたとしても、それは攻撃方法が変更されただけであつて、請求の原因に変更があつたのではなく、前後を通じ請求の基礎に変りがないことは言うまでもない。論旨は採用することができない。

同第三点について、

本案の裁判に対する上告の理由がないときは、訴訟費用の裁判に対する不服の申立はこれを許さないものというべきである(昭和二七年(オ)第七三四号昭和二九年一月二八日第一小法廷判決)。本件において本案に関する論旨は総て理由がないから訴訟費用のみに関する本論旨は上告の理由として採用出来ない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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